タエ子の備忘録

1992年生まれ。ワーママ。呟きの向こう側。

母と娘②

小学校4年生の2月14日。


私は、母に殴られないように急いで起きた。


急いでトイレに行き、

急いで着替え、

急いで朝ごはんを食べた。


急いだけど、結局「急いで!早く!」と言われた。


さて、歯磨きをしましょうかと思ったその時

「タエ子、これ」

母が紙袋を差し出してきた。


紙袋の中には、

私が選んでいない銀色の包装紙。


「ママが作ったバナナケーキ入れといたから。タエ子が買った袋には入らなかったから、前にママが買ってた袋に入れたよ」


早口で言う母。

どこか得意げ。


一体どんなものを入れたのか、

私が作ったチョコレートは入っているのか、

私が買ってもらった包装紙はどうなったのか、

気になったけど、怖くてきけず、


「そう…ありがとう…」

とだけ言って、受け取った。


反応が薄すぎたのか、

母は機嫌が悪くなって、

「ほら、早く」

と言った。


モヤモヤしながら急いで学校へ行き、

凡例通りにクラスの男子に配った。


他の子の淡い色にまざる、

よく目立つ銀色の包装紙。


「タエ子のだけやたらでかいな」

男子が笑っている。

「愛の重さだよ」

そう言って誤魔化した。


【③へ続く】